F E S T I V A L / FEST-222
久渡寺のオシラ講
くどじのおしらこう
津軽地方の家々で祀られてきた家神「オシラサマ」を、年に一度、信徒が桑の木の御神体ごと久渡寺に持ち寄る独特の参拝行事。各家・各村で受け継がれた男女一対の人形神に色とりどりの布(オセンダク)を着せ、寺の本堂で御朱印を押してもらう所作を「位を上げる」と呼び、毎年参るとオシラサマの位が上がると伝える。華やかに装ったオシラサマを祭壇に並べたのち、護摩にかざした大幣で御神体と参拝者を一斉に祓う。蚕・農業・馬の神とされるオシラサマ信仰の現役の姿を一日で見渡せる稀有な機会で、「久渡寺のオシラ講の習俗」として国の記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財に選択されている。

H I G H L I G H T S
見どころ
- 01色鮮やかな布(オセンダク)を幾重にも着せられた男女一対の人形神オシラサマが祭壇に林立する光景
- 02御朱印を一枚ずつ押し重ねて『位を上げる』という、参拝の積み重ねが目に見える独特の作法
- 03護摩にかざした大幣で御神体と参拝者をまとめて祓う、家神と寺院儀礼が交わる瞬間
A C C E S S / M E T A
基本情報
- 所在地
- 青森県 弘前市
- 斎行
- 護國山観音院 久渡寺(真言宗智山派)
- 日程
- 2026-05-15 〜 2026-05-16
- 周期
- 毎年5月15日・16日(固定。かつては旧暦4月)
- 起源
- オシラサマは東北、とりわけ津軽・南部地方で広く祀られてきた家の神で、蚕の神・農業の神・馬の神とされる。その由来は「長者の娘と飼い馬の悲恋から生まれた神」という馬娘婚姻譚として各地に伝えられるが、起源そのものは明確でない。御神体は桑の木を芯に男女一対で作られ、布の衣を重ね着せて各家・各村で祀られる。久渡寺は津軽三十三観音霊場第一番札所・津軽真言五山の一つで、いつしか津軽一円のオシラサマを年に一度寺に集める大祭の中心となった。近世以来の記録が残り、昭和30年代まではイタコによる口寄せ・占いも併せて行われていた。
- 観覧
- 毎年5月15日・16日の両日に久渡寺本堂で行われる。山中の寺で参道は狭く石段が続くため、大祭時は混雑しやすく歩きやすい靴が望ましい。御神体や信徒の祈りの場であり、人形神・参拝者を無断で接写せず、撮影可否や立入は現地の案内・寺の指示に従う。本堂内は祈祷・読経が続くため静粛に。公共交通は便が限られ自家用車利用が現実的だが、繁忙時の駐車は譲り合いが必要。例年の開催可否・時間は事前に久渡寺へ確認するのが確実。
- 最寄駅
- JR奥羽本線「弘前駅」(市中心部から南西へ離れた山麓・バス+徒歩)
- 徒歩
- 20分
- 駐車場
- あり(大祭時は混雑・台数限られ譲り合い必要)
D E E P D I V E
深掘り
歴史
歴史
久渡寺は青森県弘前市坂元に所在する真言宗智山派の寺院で、山号を護國山、院号を観音院といい、津軽三十三観音霊場第一番札所、津軽真言五山の一つに数えられる。本尊は聖観音で、寺伝では西暦800年頃の御堂に始まり、文治年間(1191年頃)に現在地へ移ったと伝える。この寺で年に一度行われるオシラ講は、津軽各地の家々で祀られてきたオシラサマを信徒が持ち寄る参拝行事で、現在は新暦5月15日・16日の両日に営まれる(かつては旧暦4月)。文化庁の解説によれば、参拝者は御神体にきらびやかな衣装を着せて祭壇に飾り、僧侶の祈祷を受け、御朱印を押してもらって『位を上げる』という。昭和30年代まではイタコによる占いも併せて行われていた。1999年(平成11年)に「久渡寺のオシラ講の習俗」として国の記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財に選択された。久渡寺公式サイト, 文化庁・久渡寺のオシラ講の習俗, 久渡寺 - Wikipedia
文化的背景
文化的背景
オシラサマは柳田國男『遠野物語』以来、東北の家神信仰を象徴する存在として知られる。蚕・農業・馬の神とされ、桑の木で作られた男女一対の御神体に布の衣を重ね着せて家々で祀る点に特徴がある。家ごとに祀られる『私的な神』を年に一度寺へ持ち寄り、僧侶の祈祷と御朱印によって『位を上げる』久渡寺のオシラ講は、家の信仰と寺院仏教が接続する民俗の現場であり、巫者(イタコ)の関与を含めて東北の在来信仰の重層性を示す。布をまとった人形神が一堂に並ぶ視覚は珍奇に映るが、その本質は養蚕・農耕に生きた人々の家の守り神への祈りであり、民俗学的には信仰の伝承と継承のかたちとして重要である。文化庁・久渡寺のオシラ講の習俗, 久渡寺 - Wikipedia
地元視点
地元視点
弘前市は本行事を市の文化財紹介でも取り上げ、国選択無形民俗文化財として位置づけている。津軽一円の信徒が各家のオシラサマを携えて参集し、毎年参ることでオシラサマの位が上がると信じられている点に、地域に根づいた継続的な信仰の姿がうかがえる。久渡寺自体は円山応挙作と伝わる幽霊画『返魂香之図』(弘前市有形文化財)でも知られ、信仰と観光の双方で地域に親しまれている。弘前市・国選択文化財, 久渡寺公式サイト
ベストシーズン
ベストシーズン
開催は毎年5月15日・16日の両日。新緑期で、津軽各地から信徒とオシラサマが集まる16日前後が最も賑わう。御神体が祭壇に並び祈祷・大幣の祓いが行われる時間帯を事前に久渡寺へ確認して訪れるとよい。
撮影のコツ
撮影のコツ
布をまとったオシラサマが祭壇に並ぶ全景が画になるが、御神体・信徒・祈祷の場であるため撮影可否は現地の案内に従い、人物は無断で接写しない。本堂内は暗くフラッシュ・三脚が制限される場合があるため、明るいレンズで自然光を活かす。参道の石段や新緑も津軽の山寺らしい背景になる。
注意事項
注意事項
山中の寺で参道が狭く石段が続くため、大祭時は混雑する。歩きやすい靴で訪れ、信徒の参拝・祈祷の妨げにならないよう静かに見学する。御神体や祈りの場に不用意に触れず近づかない。心霊スポットとして紹介されることもあるが、本行事はあくまで現役の信仰行事であり、興味本位の振る舞いは慎む。公共交通は限られるため事前にアクセスを確認する。
出典