F E S T I V A L / FEST-217
麓山の火祭り
はやまのひまつり
福島県富岡町上手岡地区の麓山神社に伝わる火の神事で、福島県指定重要無形民俗文化財。山岳信仰(ハヤマ信仰)と神仏習合の流れを汲み、五穀豊穣・無病息災・家内安全を祈願する。当日昼は氏子が持ち寄った農作物を神前に並べる「七十五膳の献膳」を行い、収穫への感謝を捧げる。夕刻になると白褌姿の若衆が、自身の体格に合わせて束ねた萱や竹の松明(大きいものは長さ約3メートル・重さ約40キロ)を肩に担ぎ、「千灯(せんどう)、千灯」の掛け声とともに標高約230メートルの麓山頂上の社殿を目指して参道を一気に駆け上がる。頂上での万歳三唱ののち炎を引いて駆け下り、境内の社殿を右回りに三十三周する。東日本大震災・福島第一原発事故に伴い2011年から中断し、2018年に復活した、復興の象徴ともいえる行事である。

H I G H L I G H T S
見どころ
- 01白褌姿の若衆が長さ約3メートル・重さ約40キロにもなる燃え盛る松明を肩に担ぐ
- 02「千灯、千灯」の掛け声とともに標高約230メートルの参道を炎を引いて駆け上がる群像
- 03頂上から駆け下りた後、火を手にしたまま社殿を右回りに三十三周する独特の所作
- 04原発事故で7年間中断し2018年に復活した、避難・帰還を経た復興の火
A C C E S S / M E T A
基本情報
- 所在地
- 福島県 双葉郡富岡町
- 斎行
- 麓山神社(上手岡麓山神社)
- 日程
- 2026-08-15
- 周期
- 毎年8月15日(固定)
- 起源
- 麓山の火祭りは、東北一帯に広がる山岳信仰「ハヤマ(葉山・麓山)信仰」を背景に成立したと考えられている。麓山は里と神域(奥山)の境にある「端山」を神格化したもので、農耕と祖霊・水源の神として祀られてきた。富岡町上手岡の麓山神社は、その典型的な事例として知られる。江戸時代に社が焼失したため確かな草創は不明だが、明治6年の記録では当時96戸の氏子を擁したとされ、少なくとも数百年にわたり継承されてきた火の神事である。松明を担いで神体山を駆け上がる所作は、火によって穢れを祓い、豊作と村の安寧を山の神に祈る意味を持つとされる。地元では「400年以上続く」とも語り継がれている。
- 観覧
- 毎年8月15日に開催。昼は神社境内で「七十五膳の献膳」、松明行列・駆け上がりは夕方6時頃から始まり、その後は盆踊りへと移る。会場は上手岡の麓山神社で、常磐自動車道・常磐富岡ICから車で約5分。観覧は無料。クライマックスの駆け上がりは標高約230メートルの山道・参道で行われるため、見物・撮影の際は足元の悪い夜道に十分注意し、燃え盛る松明や担ぎ手の動線に近づきすぎないこと。夏場でも夜間の山道は冷えることがあるため、歩きやすい靴と虫除けの用意が望ましい。震災・原発事故からの復興行事であることに敬意を払い、慰霊・信仰の場としての節度を守って見学する。
- 最寄駅
- JR常磐線「富岡駅」
- 駐車場
- あり(祭事時は臨時駐車場・係員の案内に従う)
D E E P D I V E
深掘り
歴史
歴史
麓山の火祭りは福島県指定重要無形民俗文化財であり、東北各地に分布する「ハヤマ(麓山・葉山)信仰」を母体とする火の神事である。ハヤマ信仰では、里と奥山の境に位置する低い神体山を、農耕・水源・祖霊を司る神として祀る。富岡町上手岡の麓山神社はその代表例とされる。江戸時代に社殿が焼失したため明確な起源は不明だが、明治6年の記録には当時96戸の氏子の存在が記されており、地域に深く根づいた行事であったことがうかがえる。当日昼には氏子が農作物を持ち寄り神前に並べる「七十五膳の献膳」が行われ、夕刻からは白褌姿の若衆が松明を担いで標高約230メートルの頂上社殿を目指して駆け上がる。2011年の東日本大震災・東京電力福島第一原発事故により富岡町全域が避難を強いられ祭りは中断したが、2018年に復活し、現在まで継続している。とみおかプラス, うつくしま電子事典, 福島民報 ふくしまの伝統行事
文化的背景
文化的背景
地元視点
地元視点
富岡町は原発事故により全町避難となり、麓山の火祭りも2011年から数年間中断した。2018年に避難指示の一部解除と社殿の修復を経て祭りが復活したことは、住民にとって帰還と地域再生の象徴的な出来事として受け止められている。一般社団法人とみおかプラスなど地域団体が情報発信と運営支援を担い、避難先からの帰省者や町外の来訪者にも開かれた行事として継続されている。担ぎ手の確保や高齢化という課題を抱えながらも、地元の若衆が松明を担ぎ続けることに、共同体の存続を託す思いが込められている。とみおかプラス, 福島民報(2025年)
ベストシーズン
ベストシーズン
毎年8月15日。クライマックスの松明駆け上がりは夕方6時頃から日没後にかけて行われるため、夕刻に到着しておくのがよい。日が落ちて炎が際立つ時間帯が最も見応えがある。
撮影のコツ
撮影のコツ
炎の松明を担いで参道を駆け上がる瞬間が最大の見せ場。赤い鳥居や社殿を背景に、暗がりに浮かぶ炎と白褌の担ぎ手を捉えると象徴的な一枚になる。夜間・動きの速い被写体のため、感度を上げてシャッタースピードを確保し、三脚は動線の妨げにならない位置に。担ぎ手や火の粉に近づきすぎないこと。
注意事項
注意事項
山道・参道は夜間で足元が悪く、燃える松明が至近を通過する。見物位置は係員の指示に従い、火の粉・火傷に注意する。震災と原発事故からの復興行事であり、慰霊と信仰の意味を持つ場であることを理解し、静かに敬意をもって見学する。私有地や神域に無断で立ち入らない。
出典