F E S T I V A L / FEST-211
相模国府祭
さがみこうのまち
相模国府祭(さがみこうのまち)は、かつて相模国の国府が置かれた大磯町国府本郷で毎年5月5日に行われる古式の祭礼で、神奈川県指定無形民俗文化財。相模国の一之宮・寒川神社、二之宮・川勾神社、三之宮・比々多神社、四之宮・前鳥神社、一国一社の平塚八幡宮、そして総社の六所神社という六社の神輿が神揃山(かみそろいやま)に参集し、午後には大矢場(馬場公園)で国司祭が営まれる。最大の見どころは「座問答(ざもんどう)」で、相模国成立にあたっての一之宮争いを儀式化した神事である。寒川・川勾の両社が虎の皮を交互に敷き進めて席次を主張し、決着がつかぬまま三之宮・比々多神社が「いずれ明年まで」と仲裁して翌年に持ち越す。勝敗を意図的に保留する珍しい所作と、虎皮を用いる古雅な作法が、千年級の国府儀礼の記憶を今に伝えている。

H I G H L I G H T S
見どころ
- 01本物の虎の皮を地面に敷き進めて席次を主張する「座問答」の所作
- 02毎年あえて決着をつけず「明年まで」と翌年へ持ち越す独特の作法
- 03相模六社の神輿が一つの丘(神揃山)に集結する古代国府の儀礼的再現
- 04平安貴族文化を起源とし船形の舞台で演じられる「鷺の舞」
A C C E S S / M E T A
基本情報
- 所在地
- 神奈川県 中郡大磯町
- 斎行
- 六所神社(総社)ほか相模五社(寒川神社・川勾神社・比々多神社・前鳥神社・平塚八幡宮)
- 日程
- 2026-05-05
- 周期
- 毎年5月5日(固定)
- 起源
- 大化改新後、国司が相模国内の主要社を国府に招き、国の平安と五穀豊穣を祈願した慣習に由来するとされる。『新編相模国風土記稿』には「養老年間に始むと云えど」と記され、起源は奈良時代にまで遡る可能性がある古い祭礼である。律令制下で各国に置かれた総社・一之宮制度を背景に、相模国の序列を確認・更新する場として機能した。とりわけ座問答は、寒川神社と川勾神社のいずれを一之宮とするかという歴史的論争を神事として様式化したもので、明確な決着を避けて毎年繰り返す形に整えられた点に、共同体の均衡を保つ知恵が読み取れる。現在は六所神社が祭事の中心を担い、神奈川県無形民俗文化財として保存・継承されている。
- 観覧
- 開催は毎年5月5日(こどもの日)。午前は神揃山で座問答などの神事、午後は大矢場(馬場公園)で国司祭・鷺の舞などが奉納される。観覧は神揃山および大矢場の指定エリアから無料で可能だが、神事の進行を妨げないこと。座問答は午前中の限られた時間に行われるため、午前のうちに神揃山へ。丘の上は足場が良くない箇所もあり歩きやすい靴を推奨。例年の人出は多く、座問答を正面から見るなら早めの場所取りが要る。
- 最寄駅
- JR東海道本線「二宮駅」または「大磯駅」
- 徒歩
- 30分
- 駐車場
- 専用駐車場は乏しく、祭礼日は交通規制あり。公共交通機関推奨
D E E P D I V E
深掘り
歴史
歴史
相模国府祭は、相模国の国府が置かれた現在の大磯町国府本郷一帯を舞台とする祭礼で、律令制下の総社・一之宮制度に根ざす。六所神社の由緒では大化改新後に国司が相模の主要社を国府へ招いた慣習に始まると伝え、『新編相模国風土記稿』は「養老年間に始むと云えど」と記す。一之宮・寒川神社、二之宮・川勾神社、三之宮・比々多神社、四之宮・前鳥神社、一国一社の平塚八幡宮、総社・六所神社の六社が神揃山に参集し、午後は大矢場(現馬場公園)で国司祭が営まれる二部構成をとる。六所神社公式・大磯町はこれを神奈川県指定無形民俗文化財として紹介している。
文化的背景
文化的背景
本祭の核心は、相模国の序列をめぐる歴史的論争を神事へと昇華させた「座問答」にある。寒川神社と川勾神社が一之宮の座を争い、虎の皮を交互に敷き進めて主張するが、三之宮・比々多神社が「いずれ明年まで」と仲裁し、決着をつけずに翌年へ持ち越す。神奈川新聞も「虎の皮を使った恒例の座問答」と報じる通り、勝敗の保留こそがこの儀礼の眼目であり、共同体間の均衡を毎年確認し直す装置として機能してきた。民俗学的には、国府総社祭の系譜と、争いを和へ転じる神事様式の双方を併せ持つ稀有な事例である。
地元視点
地元視点
神揃山は普段、ソメイヨシノに囲まれた地元住民の憩いの丘だが、5月5日には六社の神輿と氏子が集い、祭礼空間へと一変する。文化遺産の世界の観覧記でも、座問答の古雅な所作や、午後の大矢場での国司祭・舞の奉納が、地域の年中行事として大切に受け継がれている様子が伝えられている。六所神社を中心とする保存の体制のもと、近隣自治体(大磯・平塚・寒川・伊勢原・茅ヶ崎)にまたがる広域の祭礼として続いている。
ベストシーズン
ベストシーズン
座問答を見たいなら5月5日の午前中(神揃山)が必須。午後は大矢場(馬場公園)で国司祭・鷺の舞が奉納されるため、午前は神揃山・午後は大矢場という回り方が定番。
撮影のコツ
撮影のコツ
座問答は虎皮を敷き進める所作が見せ場。装束の朱・緑と虎皮の対比が映えるため、正面やや高めの位置から望遠で抑えるとよい。屋外日中のため順光・日差し対策を。神事中はフラッシュや進行妨害を避け、指定観覧エリアを守る。
注意事項
注意事項
神揃山は丘上で足場の悪い箇所があり歩きやすい靴推奨。神事区域・神輿の通路には立ち入らない。5月初旬は日差しが強いため帽子・水分を。混雑するため座問答は早めの場所取りを。撮影は他の観覧者・神事の妨げにならないよう配慮する。
出典