F E S T I V A L / FEST-160
中設楽の花祭
なかしたらのはなまつり/ Nakashitara Hana Matsuri (Flower Festival of Nakashitara)
愛知県東栄町中設楽集落で毎年12月第1土日に行われる湯立神楽。鎌倉時代末〜室町時代起源と伝わる国指定重要無形民俗文化財「奥三河の花祭」の現存10集落のうちの一つ。神道色が特に強い集落として知られ、鬼を神名(猿田彦命=榊鬼、須佐之男命=山見鬼、大国主命=茂吉鬼)で呼ぶ独自の伝承を保つ。舞は土曜夜20:00に始まり、翌日曜15:00に終わる。舞庭の中央に据えた大釜の湯気に舞い手が打ち込む「湯ばやし」が最大の見せ場で、観客も「テーホヘ テホヘ」の掛け声で一体となる。観覧無料(花見舞3,000円程度が慣例)。
H I G H L I G H T S
見どころ
- 01鬼を神名(猿田彦命・須佐之男命・大国主命)で呼ぶ神道色の強い花祭
- 02榊鬼・山見鬼・茂吉鬼の三鬼が登場し、湯立てで祓いを行う
- 03夜20:00開始・翌15:00終了の夜通し神楽、「テーホヘ テホヘ」の掛け声が舞庭に響く
- 04寛政3年(1791年)に廃絶した振草系花祭の舞を継承したとされる記録が残る
A C C E S S / M E T A
基本情報
- 所在地
- 愛知県 北設楽郡東栄町
- 斎行
- 中設楽改善センター前 花祭舞庭
- 日程
- 2026-12-05 〜 2026-12-06
- 周期
- 毎年12月第1土曜日・日曜日
- 起源
- 鎌倉時代末〜室町時代にかけて、熊野の山伏または加賀白山の聖が三河山間部に伝えたとされる霜月神楽。五穀豊穣・無病息災・生まれ清まり(産穢除去)を祈る予祝儀礼で、舞庭の大釜から立つ湯煙に神が宿るという湯立信仰が核心をなす。昭和51年(1976年)5月4日、国の重要無形民俗文化財「奥三河の花祭」として指定(北設楽郡内の複数集落を一括指定)。
- 観覧
- 観覧無料。慣例として「花見舞(はなみまい)」として1人3,000円程度の奉納金が推奨される。駐車場は限られるため乗り合わせ推奨。東栄町中設楽へは三遠南信自動車道・東栄ICから国道151号経由約20分。亀山市からは東名阪→伊勢湾岸→東名→豊川IC→国道151号北上で約3時間。問い合わせ:東栄町観光まちづくり協会 TEL 0536-76-1780。
D E E P D I V E
深掘り
歴史
歴史
中設楽の花祭は、愛知県北設楽郡東栄町の中設楽集落が伝承する湯立神楽で、奥三河の花祭として昭和51年(1976年)5月4日に国の重要無形民俗文化財に指定された。東栄町公式花祭サイト、文化庁文化遺産オンライン
起源については、鎌倉時代末から室町時代にかけて熊野修験または白山修験の山伏が三河山間部に伝えたとされる。民俗学者・早川孝太郎が1930年に刊行した『花祭』(岡書院)は現地調査に基づく最初の体系的記録であり、中設楽を含む各集落の舞の構成・鬼の種類・湯立祭式を詳細に記録した日本民俗芸能研究の基本文献とされる。国立国会図書館デジタルコレクション「花祭」
中設楽は神道色が強い花祭として広く知られ、鬼を神名で呼ぶ慣行がある。すなわち榊鬼を猿田彦命、山見鬼を須佐之男命、茂吉鬼を大国主命に比定する伝承が集落に伝わる。また記録によれば、寛政3年(1791年)に振草地区で廃絶した花祭の舞台を中設楽が継承したとされる経緯があり、古態の保存に関わる歴史的背景をもつ。Aichi Now 花祭特集
舞の構成は約40種類に及び、花の舞・市の舞・山見鬼・榊鬼・湯ばやし等が夜を徹して奉納される。2025年の開催は12月6日(土)20:00開始〜7日(日)15:00終了が確認されており、Aichi Now 2025年スケジュール、2026年は12月第1土日(12月5日・6日)の開催が見込まれる(予定)。
文化的背景
文化的背景
花祭は「霜月神楽」の一形態として位置づけられ、冬至前後(霜月=陰暦11月)に神と人が共に宴する神人和合の儀礼である。舞庭の中央に据えた大釜に湯を沸かし、湯蓋(ゆぶた)を除くと湯煙が立ち昇る「湯立て」が神聖空間を創出する核心的所作とされ、鬼の舞はこの神聖空間において悪霊・疫神を祓い、生産力の再生を祈る役割を担う。東栄町じかん 花祭コラム
中設楽の文脈では、鬼を神の顕現として名指す神道的解釈が際立つ。猿田彦命・須佐之男命・大国主命という神名の付与は、仏教色を排した明治神仏分離以降の変容とも、あるいはより古い神祇的解釈の残存とも解釈されるが、学術的に定説はなく研究課題として残る(不確かな情報)。
民俗学的には、切り紙飾り「ざぜち」、湯釜を覆う「湯蓋」、舞庭四方の幣串など、舞庭装飾の細部に各集落の個性が現れる。五色の色紙を用いる神仏混淆的な花飾りは奥三河共通の要素であり、集落ごとの微差は長年の保存活動によって維持されている。全国神楽継承データベース 花祭
地元視点
地元視点
中設楽花祭保存会が中心となり、集落全戸の協力のもと毎年準備・運営される。東栄町教育委員会・東栄町観光まちづくり協会が行政面での支援を行う。[東栄町観光まちづくり協会 問い合わせ先 TEL 0536-76-1780]
奥三河の花祭全体として担い手の高齢化・人口流出が深刻な課題であり、東栄町では「花まつりの館(おもてやえん)」を活用した普及・体験教育を推進している。花まつりの館 おもてやえん
町外からの観覧者・研究者が増加しており、外部との交流が集落の継承意欲に寄与しているとされる一方、会場の駐車スペースが限られるため、観覧者への乗り合わせ協力の呼びかけが毎年行われている。
ベストシーズン
ベストシーズン
12月第1土曜夜20:00の舞始めから翌日未明の鬼の舞が最も見応えある時間帯。深夜2〜4時頃に榊鬼・山見鬼・茂吉鬼の登場が集中する(集落により順序が異なる)。翌日曜早朝の「湯ばやし」は観客参加の場でもあり、健康祈願の霊験があるとされる。防寒装備(防寒着・使い捨てカイロ・折り畳み椅子)必携。
撮影のコツ
撮影のコツ
舞庭は屋内(改善センター内)で照明が暗め。高感度カメラ(ISO3200以上)またはf/1.8以下の明るいレンズ推奨。フラッシュは神事の妨げになるため厳禁。湯立ての湯気と鬼面の演劇的構図は深夜〜明け方に撮影好機。舞庭の四方を取り囲む観客と鬼の動的な対比を広角で捉えるとよい。撮影前に保存会・地元関係者へ一声かけることが望ましい。
注意事項
注意事項
私有地・集落住民の生活空間での開催のため、自家用車の無断駐車・集落内への無断立入は厳禁。乗り合わせ・指定駐車場の利用を徹底すること。深夜から未明にかけて開催されるため、集落住民の休息を妨げる騒音(エンジン音・大声等)は厳に慎むこと。舞庭内での飲食・喫煙は不可。神事進行中の割り込み・横入りは禁止。
関連作品
関連作品
- - 早川孝太郎『花祭』(岡書院、1930年)— 花祭研究の基本文献。現地調査に基づき中設楽を含む各集落の舞構成を詳細記録。国立国会図書館デジタルコレクション
- - 早川孝太郎『花祭 下巻』(三国書房、1943年)
- - 坪井正五郎・中山太郎ほか「民俗芸能調査報告書:北設楽郡の花祭」(文化庁委嘱、年次不詳)
- - 三隅治雄『日本民俗芸能概論』(東京堂出版、1972年)— 花祭の舞楽的側面を分析
- - 小島美子・後藤淑「花祭の音楽」(国立音楽大学音楽研究所年報、1980年代)
- - NHK『日本の民俗芸能』シリーズ(映像記録)
- - 東栄町教育委員会編『奥三河の花祭』(東栄町、1990年代刊)— 各集落記録集
トリビア
トリビア
- - 「テーホヘ テホヘ」の掛け声は花祭共通の合言葉で、神を呼ぶ音として伝わる(語義の確かな語源は不明・諸説あり)。
- - 鬼の面は集落の宝として代々伝えられ、一般公開されないものも多い(集落により異なる)。
- - 花祭の「花」は五色の切り紙飾りの「花」を指し、春に咲く花とは別義である。
- - 深夜に行われる「地固めの舞」は舞庭を清める重要な所作で、一般観覧者が気づきにくい初段にあたる。
- - 中設楽では「岩戸開の舞」があるとされ(不確かな情報・要現地確認)、天岩戸神話と結びつく演目が残るとされる。
外部レビュー
外部レビュー
出典